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不動産決済業務の具体的な事例(3)

  • 掲載日:2009年03月11日

キャリアコンシェルジュ

新谷 健太郎 しながわ法務司法書士事務所 

職業 司法書士。 青山学院大学法学部卒業後、電子部品メーカーで3年間営業を担当。 独立開業できるスペシャリストを目指すため、アルバイトをしながら司法書士試験の勉強開始。 平成17年度司法書士試験合格。 平成20年3月五反田にてしながわ法務司法書士事務所開業。 現在は、顧客サービスの難しさに悩みながら、自分の事務所のスタイル確立に悪戦苦闘中。

第3回も、不動産の権利保全の登記をするに当たっての重要な要件となる

(1) 関係者の本人確認及び意思確認 
(2) 登記申請を行うために必要な書類を関係者から入手すること

この2点に関して、特に(2)のトラブル事例についてお話します。
 
1 売主夫婦共有の中古マンションを、買主が購入する不動産取引決済のお仕事を行うことになりました。
 
2 いつもと変わらない普通の案件だと思い、事前準備をして不動産決済に行きました。
⇒不動産売買の代金支払いから各費用の精算などを行う日のことを一般的に不動産の決済
日と言っています。
決済日に、買主、売主、売主の住宅ローンの銀行、不動産会社、司法書士など関係者全
員が、買主Aの住宅ローンの銀行に一堂に集まります。
通常は、売主の住宅ローンの銀行担当者は決済現場に来ることはなく、決済する銀行か
ら返済金を振り込んで、住宅ローン完済後書類を取りに行きます。
    
3 さてみんな集まったのに、売主の夫がなかなか来ません。
   「おかしいな?」と思いましたが他の手続きを進めていました。
 
4 ようやく30分後に売主の夫が現れて、何もなかったかのように始まりました。
    必要な書類もそろい、関係者の確認も終わったので売買代金の支払い手続きを行う段階になりました。
 
5 今までの経験からなんとなく気になったので、買主の住宅ローンの融資実行をする前に、
    売主の夫に「今日は何かあったのですか?」と聞いてみました。
 
6 売主の夫 「お金が足りないので父に頼んでいたのだが、
               銀行から借入ができるのが、来週になってしまったんですよ。」
 
7 私    「えっ、そのお金は、もしかして住宅ローンの返済に足りない分ですか?」
売主の夫 「そうです。」
不動産会社「事前に足りないお金を住宅ローンの返済口座に入金しておいてくださいと
           言っておいたかと思いますが。」
売主の夫 「来週足りない分払うのではダメですか?」
とこんな展開になりましたので決済を中断して状況を確認しました。
  
⇒通常売主の情報やお金の精算に関するところは、不動産会社が把握しており我々にはわ
 からない話なのです。
売主の夫はのんびりとした方で、後日間違いなく支払えば問題ないと思っていたようです。

8 さて、今回の内容はこんな内容でした。
 
   ①売主夫婦は、数年前結婚と同時に住宅ローンを組んで新築マンションを購入。  
                ↓
      ②子供が生まれて数年は幸せな生活が続いたが、離婚することになった。
                ↓
   ③子供は妻が引き取り、マンションを売却することにした。
                ↓
      ④新築の値段から大幅に下落したので、売却代金では住宅ローン全額を支払えない。
                ↓
      ⑤足りない分は、夫の父からお金を借りて事前に返済口座に準備しておくことになっていた。
                ↓
      ⑥父が銀行から借り入れする予定だったが決済当日に間に合わなかった。
     
⇒買主に所有権を移転するにあたって、売主の住宅ローンに対する銀行担保権を抹消しな
くては、買主は人の借金の担保に入ったマンションを購入することになります。
ですから、必ず決済日に完済して、担保抹消を行って所有権移転するわけです。
 
9 さて困りました、売主の夫、妻ともに自分の銀行口座からかき集めても、
    全然足りないのでどうにもならない。
    足りないということは、住宅ローンの銀行から抹消書類がもらえないので、
    担保抹消できないわけです。
 
10 みんな集まっているのにどうにもならない。
      仕方がないので、決済を中止して1週間後に仕切り直しとしました。
 
11 決済延期は大変です。月が変わると、買主の住宅ローンの金利がアップしたり、
      リフォームやら、引っ越しスケジュールなどいろんなことに問題が出てきますので、
      損害賠償という問題が発生します。
12 その後いろいろ調整して1週間後無事決済が終了し、担保抹消して所有権は買主に移転出来ました。
 
13 今回のケースは、不動産の権利保全の登記をするに当たって重要な要件のうち、
(2)登記申請を行うために必要な書類を関係者から入手すること
 こちらが満たされなかったわけです。
 こういった買主や、買主の住宅ローン銀行の権利保全ができない場合、
  決済を中止する権限が我々に与えられているわけです。
 地味なお仕事ですが(笑)、こんなふうに不動産取引の安全を保全する仕事をしているのです。
 
今回はいろいろあった関係で、売主の妻といろいろお話をすることがありました。
離婚して、自分たちの幸せな思い出の詰まった家を売るのは何とも言えない気持ちだったんでしょう。
全部終わったとき、涙をポロポロ流して「いろいろご迷惑をお掛けしました。」と言って去って行かれました。
「大変ですが、お子様と幸せな生活を送ってくださいね。」と思いつつ後ろ姿を見送りました。
 
では、また次回。

 

 

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